2026年、60年に一度巡ってくる「丙午」の年を迎えました。
干支の中でも特に強いエネルギーを持つと言われるこの特別な「午年」に、沖縄の風景の中に息づく小さくて愛らしい馬たちに注目してみませんか?
かつては王国の交易を担い、島の人々の暮らしを支えてきた沖縄の馬たち。
現在は「宮古馬」と「与那国馬」の2種類が、日本在来馬として奇跡的に命をつないでいます。
本記事では、丙午の年にこそ知っておきたい沖縄の在来馬の魅力、歴史、そして今まさに体験できる「馬との触れ合い」についてご紹介します。
沖縄に生きる2つの宝「宮古馬」と「与那国馬」
日本国内には8種類の在来馬が現存していますが、そのうちの2種が沖縄県内に生息しています。いずれも小型で温厚、粗食に耐える強健さを持っていますが、それぞれ独自の特徴があります。
絶滅危惧の希少種「宮古馬」
宮古島を中心に飼育されている宮古馬は、沖縄県の指定天然記念物です。
- 特徴
体高約120cm。頭が大きく、隆起サンゴ礁の硬い地面に適応した強靭な蹄を持っています。 - 現状
その数は極めて少なく、近年ではわずか48頭(2024年時点, 保存団体報告値)しか確認されていない、絶滅が危惧される希少種です。
野生の血を色濃く残す「与那国馬」
日本最西端、与那国町(与那国島)の天然記念物です。
- 特徴
体高110〜120cm。最大の特徴は、背中に走る「鰻線」と呼ばれる黒い筋です。これは野生馬に近い原始的な特徴とされています。 - 現状
一時は20頭余りまで激減しましたが、島外への「分散飼育」などの保護活動により、現在は100頭前後を維持しています。
琉球王国と庶民を支えた「馬」の歴史
沖縄の馬は、単なる家畜以上の存在として歴史に刻まれています。
交易と農業のパートナー
琉球王国時代、馬は重要な輸出品であり、外交の道具でした。
中国(明・清)への進貢や、薩摩藩への献上品として海を渡りました。また、国内ではサトウキビの搾汁機を引いたり、荷物を運んだりと、人々の生活基盤を支えていました。
優美さを競う競馬「ンマハラシー」
沖縄にはかつて、独特の競馬文化がありました。
それが「琉球競馬」です。
一般的な競馬のような「速さ」ではなく、「足並みの美しさ」や「騎手と馬の調和」を競うのが特徴です。
かつては県内各地の馬場で盛んに行われ、庶民の娯楽であり、名誉をかけた真剣勝負の場でした。 戦争によって一度途絶えましたが、現在は沖縄こどもの国(沖縄市)などで復活開催され、伝統文化として再注目されています。
絶滅の危機と保護活動の光
かつては県内に4万7,000頭もいた馬たちですが、近代化の波が彼らを絶滅の淵に追いやりました。
「機械化」と「改良」という試練
戦後、トラクターや自動車の普及により、農耕馬としての役割が消滅しました。さらに深刻だったのが、大型馬への品種改良政策です。これにより純粋な在来馬の血統が失われていきました。 宮古馬や与那国馬が生き残ったのは、離島という地理的条件や、島民による必死の保存活動があったからこそです。
「活用」して守る新しいモデル
現在、保存活動は「ただ飼育する」だけでなく「活用する」フェーズに入っています。
分散飼育
与那国馬は、感染症や災害による全滅リスクを避けるため、沖縄本島、久米島、石垣島、さらには県外へも活動の場を広げています。
ブランディング
与那国町では新しいシンボルキャラクター「よなたん」を発表するなど、親しみやすい存在としての認知拡大を図っています。
与那国町の魅力を発信する「与那国町発信シンボル」の名称。シンボルは2025年10月に発表され、11月にその愛称を全国公募。2026年1月4日の「二十歳の集い」の式典会場で「よなたん」という名称が発表された。
https://yonaguni-brand.com/
沖縄の馬と「遊ぶ・触れ合う」体験スポット
丙午の今年、沖縄の馬たちは「観光」や「癒やし」のパートナーとして活躍しています。蹄鉄を必要としない彼らは、海辺や砂浜を歩くのが得意です。
究極の非日常体験「海馬遊び」
特に人気を集めているのが、馬に乗ったまま海に入る「海馬遊び」やビーチトレッキングです。南城市や久米島などで体験でき、馬の尾につかまって泳ぐ体験は、沖縄ならではのアクティビティとして注目されています。
主な体験スポット一覧
| 地域 | 施設名 | 体験内容 |
| 沖縄本島 | うみかぜホースファーム(南城市) | 海馬遊び、トレッキング、セラピー |
| 沖縄本島 | 沖縄こどもの国(沖縄市) | 展示、学習プログラム、ンマハラシー開催 |
| 宮古島 | まいぱり宮古島熱帯果樹園 | 乗馬体験、餌やり体験 |
| 与那国島 | 北牧場・東牧場 | 半野生状態での放牧風景見学 |
| 与那国島 | NPO 風馬 与那国馬 倶楽部 | 乗馬体験 |
| 久米島 | 久米島馬牧場 | 浜辺での乗馬、馬との遊泳 |
文化に息づく馬の記憶
沖縄の伝承や言葉の中にも、馬は生き続けています。
赤馬の伝説
石垣島には、捨てられた子馬を名馬に育て上げた役人の伝説があり、祝い歌「赤馬節」の由来となっています。
ユニークなことわざ
昔の沖縄では「馬糞を踏むと足が速くなる」という言い伝えがあり、運動会前には子どもたちが馬糞を探したという微笑ましいエピソードも残っています。
60年に一度の「特別な『午年』」を、生きる文化遺産とともに
2026年、丙午。
この巡り合わせの年に、沖縄の自然と歴史が生み出した「生きた文化遺産」に触れてみるのはいかがでしょうか。
宮古馬はわずか48頭と予断を許さない状況にありますが、私たちが彼らに関心を持ち、観光や教育を通じて触れ合うことが、種の保存を支える大きな力になります。
次の沖縄旅行では、リゾートの海だけでなく、古くから島の人々に寄り添ってきた馬たちに会いに行ってみませんか? その優しい瞳の奥に、琉球の長い歴史を感じることができるはずです。